ひらいずみ郷土芸能祭「神楽大会」
ひらいずみ郷土芸能祭「神楽大会」
―村上護朗先生を偲ぶ―
【共催】平泉郷土館・平泉町芸術文化協会
【日時】2006年9月23日(祝 土) 13時開演 閉会:18時(予定)
【会場】平泉郷土館「ふれあいホ−ル」
観 覧 無 料
番 組
★鶏 舞 一関市 峠山伏神楽
★御神楽 平泉町 達谷窟毘沙門神楽
★三番叟 平泉町 長部神楽
★山の神 藤沢町 本郷神楽
★岩戸開 一関市 牧沢神楽
★法童丸 一関市 布佐神楽
★龍神舞 平泉町 長部神楽
★黒塚 一関市 蓬田神楽
★月見坂の危難 平泉町 達谷窟毘沙門神楽
郷土館の神楽大会でお馴染みの村上護朗先生は、昨年10月8日、大東町猿沢のご自宅で
静かに息をひきとられました。
民俗芸能の振興にご尽力された村上先生は、生前「神楽ばやしに送られてあの世に行きたい」
と語られておりました。ここに、郷土の芸能を愛して止まなかった村上先生に感謝と追悼の意
を込めて、神楽大会を開催するものです。
皆様多数のご来場をお待ちしております。
【問合せ】 平泉郷土館 電話:0191−46−4012
村上護朗先生を偲ぶ
千 葉 信 胤
「かわったねえ、みんな若いもの。」そうおっしゃる村上護朗先生の満足したお顔を思い出す。
昨年(平成十七年)の九月二十三日、平泉郷土館で神楽大会を開催し、解説を村上先生にお願いした。その帰り道でのことである。
大会に参加した神楽団体の顔ぶれが、明らかに世代交代した。その芸能がしっかり継承されていることを確かめられて、言い知れぬ安堵感を覚えられたのであろうか。
その一方で、十一月に開催される全国青年大会のことをしきりに気にしておられる。大会の郷土芸能部門、県代表は牧澤神楽(一関市)だが、派遣の費用がなかなか工面できない。それが悩みの種だとおっしゃる。村上先生は岩手県青年大会の審査員を歴任され、その指導あって全国大会上位入賞を果たした団体も多い。牧澤の神楽組も、先生の指導を受けている。メンバーの阿部美佳さんは「指導というより、神楽を受け継ぐ私たちへの励まし」と回想する。その後、牧澤神楽は全国大会でみごと最優秀賞の栄冠に輝いた。
残念なことは、朗報を一番喜ばれるはずの村上先生が、十月八日、大東町猿沢の自宅でひっそりと息をひきとられていたことである。奥様を八月になくされ、「僕が死んだら、二人を偲ぶ会でもやってくれればいいから」と語られていた。生前のオシドリ夫婦ぶりから察するに、奥様が寂しがって迎えにいらしたのかも知れない。享年九十三歳、大往生といってよいのだろう。だが、私にはどこまでも惜しまれてならない。もっともっと長生きしていただきたかった。
村上先生は明治四十五年(一九一二)二月、一関市大東町猿沢の法印の家系に生まれた。生家のある峠地区は、早池峰系の山伏神楽が伝承される南限の地としても知られる。先生は「神楽の中に育った」と時おり語られた。幼年時代の思い出も、「祭の頃や小正月には毎日、夜まで神楽や躍りの稽古があったから、学校から帰ると、毎日稽古場に行って夕方まで見ていた。家に帰って夕飯をたべると又、稽古場に行って見ていた。」というほど、神楽好きであった。
その後、岩手師範学校に進まれ、戦前・戦後を通して教職の道を歩まれた。昭和四十五年(一九七〇)、郷里猿沢小学校長を最後に退職。本格的に民俗芸能の調査研究、後継者育成の支援・指導に取り組まれたのである。その後半生は、後継者たちに民俗芸能の心を伝えることに費やされた、といっていい。
「郷土芸能を支えているものはなんでしょうか。それは、おおかたの愛惜と地域の理解でしょう。この芸能をなくしてはおれない、という切実な思いがなければ、伝承は続かない。」村上先生の言葉が、今もよみがえる。
今秋の神楽大会は、村上先生に感謝と追悼の意を込めて開催する予定である。生前「神楽ばやしに送られてあの世に行きたい」とおっしゃられていた先生に、その思いが届くよう祈りながら。
(平泉郷土館主任)
※この文章は、
(財)岩手県文化財愛護協会の機関誌「いわて文化財」2006年5月号に掲載されたものです。同神楽大会のチラシにも掲載予定です。
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