日高火防祭

岩手県指定無形民俗文化財



<概説>
 日高火防祭は火消しの粋を見るには一番いいお祭りで、昼の巡行には纏振りや丁印など、珍しい火消し風俗が見られます。社参の際には囃子屋台ではなく”打ち囃子”という小型の屋台が鳥居をくぐりますが、これは200年の伝統をもつもので、適当にたたいているように見えて、実は10分を超える長い音曲を奏でているのです。丁印と打ち囃子はそれぞれ6つ、江戸時代に長印を賜った組が特権的に持っているものです。これに対し囃子屋台は9台で、駅前三町など新しい団体も若干入っています。囃子屋台には裃を着て化粧をし、着飾って簪をさした幼女が太鼓打ちとして乗り、「お人形さん」といわれて珍重されます。撥の上げ下ろしが美しく、打たないのに撥を動かしたりするしぐさは実に雅なものです。「お人形さん」は雛壇状に並び、一番上の段には三味線を弾く若い女性が、やはり着飾って乗ります。山車の上に鳳凰や竜の彫り物を施し、左右の脇には雪洞をともし、裏側には色とりどりの牡丹の紙花。実に優雅な色彩が、春の水沢を包む火防祭。夜の駅前における相打ちだけではなく、昼間にこそ見てほしいお祭りです。


各屋台が囃す音曲と屋台の見所
音曲 屋台 丁印
横町組 一声くずし 金色の極楽鳥。
袋町組 一声 山車の天井に「鎮」の文字。
駅前三町組 一声 京風の丸い雪洞が珍しい。近年巨額をはたいて製作。 なし
川口町組 つるべ井 提灯のデザインが秀逸。
柳町組 剣囃子 天井内側の装飾がきれい。
城内組 かんらん 華やかな極楽鳥の彫り物。 なし
立町組 松の緑 華やか、極彩色の鳳凰。
吉小路組 祇園囃子 金ぴかの鳳凰の彫り物。 なし
大町組 祇園囃子 海老茶の龍が勇壮に天井をうねる。



<詳細日程>
4/28 前夜祭   場所:駅前商店街

※歩行者天国
@メイプル〜レストラン東海林(午後3時から9時)
A旧ダイエー前交差点〜水沢駅前(午後6時から7時)

pm3:30〜4:30 伊藤流行山鹿踊・奥野流富士麓行山鹿踊
pm6:00〜6:40 囃子屋台競演・相打ち(2団体出演)
pm6:40〜7:00 御輿御渡り
pm7:00〜7:45 42歳厄年連演舞
pm7:45〜8:30 25歳厄年連演舞   〜終了予定 pm8:40


4/29 本祭

囃子屋台
am8:30    日高神社参拝(打ち囃子・町印市役所前参集) 〜pm1:00  囃子屋台自由運行
pm1:00    市役所前屋台集結
pm1:15〜2:00 立町運行
pm2:00〜2:30 柳町運行(佐々木五平像前にて囃子奉納)
pm3:00〜5:00 町内合同巡行
pm5:15    駅前中央通り集結・待機(打ち囃子・町印解散)
pm6:40    駅前通り運行
pm7:00    駅前にて相打ち開始
pm7:30    駅前通りにて揃い打ち
pm8:30    解散

厄年踊り 午前中    不断町〜立町区間で演舞
pm1:00〜2:00 立町〜柳町区間で演舞
pm2:00〜3:00 柳町〜横町付近で演舞
pm4:00〜   水沢駅前および駅前商店街にて演舞
※駅前商店街では一日中何らかの踊り(水沢音頭、江刺甚句、YOSAKOIソーランなど)が楽しめます

行山鹿踊り2団体
pm3:00〜4:00 駅前門付け
 

<備考>
・囃子屋台9台は、実は明治以降に盛んになったもので、それまでは打ち囃子と呼ばれる小さな屋台がお祭りの主役でした。打ち囃子は『とっとこめい』というまとまった音曲を大太鼓1つに小太鼓2つ、脇侍の笛で奏で、その旋律はソナタ形式に通ずるとか通じないとか。昼間の行列のみ、囃子屋台の先導をしますので、お見逃しなく。

・同じく夕方に解体されてしまう丁印。火消しの象徴たる馬印のようなもので、火消しがらみの山車祭りの多い岩手においても、これほどの数を一度に見られる機会は滅多にありません。ほおずきのような赤い玉を2つ重ねて波を打ったもので、意外に大きいものだなあと昨年見て思いました。合計6つ、全部をつなげて「仁心をもって火防定鎮す」と読むことができ、創始当時、水沢の領主が火防祈願として火消し組みに一時ずつ分け与えたものといわれています。

・囃子屋台より全然こっちのが目立つじゃんという感想が多い厄年踊り。胆江地方には古くから厄祓いの習慣が根強く、集団で何か恥ずかしいこと、馬鹿なことをやって、その恥と一緒に厄を祓うという信仰があります。で、25歳、42歳の水沢市民全員が仮装をしてYOSAKOIソーランに代表されるような創作舞踊を行なう。衣装、照明(トラック改造)、振りから音楽的なところまで、すべて厄年連のオリジナル。とにかく一日中町のどこかで踊っています。すごい人数で。夕方頃、伝統色とは全く違う風物詩として駅前通りを埋め尽くす1000人の演舞は大変迫力があり、郷土芸能ではないものの、そういう地元の深い愛され方をされてきた儀礼、習慣といえます。自身、昨年最も印象に残ったのがこの厄年踊りのサウンドだったりして、なんかこれに食われかかってるかも、火防祭。

・駅前通りでは午後は始終何かかにか舞踊が行なわれていて、その中で行山鹿踊りを名乗る2団体の門打ちが行われます。上に書いた時間を過ぎても、店先の門打ちをしていることがありますし、割とじっくり見られそうな気がします。あれだけスピーカーから音楽が流れているにもかかわらず、太鼓の音が全く消されないというのは驚きです。

・最後に、一番の見所とされている相打ちですけど、2団体同時に全く違った音楽を奏するのであんまり吟味できない気がします。異常に観客が多いので、じっくりも見られない気がしますし。むしろ通りでの揃い打ちの方がゆっくり囃子に酔えていいかなあと思いました。また、夜が見ものとされている囃子屋台、実際は昼に見ていいと感じられるパーツも多く、特にも山車の後ろ側を飾る紙牡丹やら軒花やらは昼間に一回見ておいたほうがよさそう。 



   以上 文責:webサイト  すてきなおまつり 管理人けんちゃん



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すてきなおまつり は、山車+芸能好きのけんちゃん氏が、岩手県を中心とした各地のおまつりについて本人の感想もたくさんまじえながら紹介するサイトです。なんつったって、視線が新鮮で、「こんな見方があったのかい」と、目からウロコがバリバリ落ちます。みちのく芸能ごよみ管理人としてもおすすめ。


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