大ヶ生山伏神楽 権現様の御歳とり 舞納め
大ヶ生山伏神楽 権現様の御歳とり 舞納め
【日程】2008年12月14日(日) 13:30〜15:30ごろ

【場所】盛岡市大ヶ生 上大ヶ生集落センター
  ※公共の交通機関では来にくいところです。足がない方は 管理人までお問い合わせください。
  ※駐車場もあります
  ※トイレもあります
  ※暖房もあります
  ※お茶とお菓子を用意してお待ちしております
  ※たぶんダンゴとかお茶餅とか。


【演目】
  八幡舞
  山の神
  天の岩戸
  〆切り
  権現舞



【 ただ「舞納め」と言わないのには理由があります 】
〜権現様といってもいろいろあります〜
 北東北一帯では、獅子頭の一種を「権現様」と呼んでいます。「権現」は、“神の形をとってあらわれたもの”の意味で、仏が神に形を変えてあらわれるという「本地垂迹」の考え方に基づいています。獅子頭を権現様と呼ぶ場合の「権現」は、基本的には“熊野権現”から来ているものでしょう。獅子頭としての権現様は、本来は“神の使い”という立場だったようですが、現在、多くの場合は「ご神体=神様そのもの」として崇められています。
 北東北の山伏神楽には、権現様を用いた「権現舞」を演じる団体が多くあります。見た目は、いわゆる「獅子舞」と同様のもので、実際に「獅子舞」という名称をとるケースもあります。権現様のすべてが権現舞用につくられているわけではありません。石製の権現様なども多く、権現舞対応ではなく、あくまでも拝む対象としての権現様のほうが数としてははるかに多いのです。
 権現舞に対応した権現様についても、神楽団体が所有する場合と、神社・個人宅などで所有する場合があります。特に神楽団体が所有する場合には、神楽にとってはある意味で消耗するモノでもあるわけですので、折々に更新していき、古い権現様は「ご隠居さま」として安置する場合がよくあります。また、現役として用いる権現様を何体も持っている団体もあります。

〜大ヶ生の権現様〜
 大ヶ生山伏神楽の権現様の場合は、大ヶ生山伏神楽を主宰してきた修験(山伏)である大ヶ生家(成善院)が権現様を所有し、祀ってきました。大ヶ生家が別当を勤める板橋神社も、藩政期には「権現堂」と呼ばれており、ご神体は権現様でした。歴史的には藩政期はじめの慶長年間(17世紀初頭)から伝わるものとされています。大ヶ生家にとっても大ヶ生山伏神楽にとっても、権現様は、あくまでもこの一体のみです。
 大ヶ生山伏神楽そのものの歴史は不明な点が多く、幕神楽について上演された事実を遡れるのは明治初頭ごろまでです。ただし、それ以前にも権現舞はおこなわれていたようで、芸能としての神楽にとっても権現様は先行した存在だったのではないかと考えられます。
 大ヶ生家(成善院)は、大ヶ生はもちろんのこと、乙部・根田茂・砂子沢を霞場(信仰支配の勢力圏)としてきました。また、上大ヶ生は、峠を越えた根田茂・砂子沢地域とも物流・姻戚関係が深い地域です。これらのこともあって、板橋神社の祭礼に根田茂・砂子沢の人がお参りに来ることもありました。さらに、大ヶ生山伏神楽が根田茂・砂子沢へ神楽を舞いに行くこともかつてはありました。そのときも、必ず権現様をもって神楽の人々は歩いたわけです。

〜おとしとり〜
 12月にはいると、神様の「おとしとり」という行事がおこなわれます。いまでは大晦日から正月にかけてを「年取り」「年越し」ということが一般的ですが、この「おとしとり」というのは、ふだんからお祀りしているいろいろな神様について、それぞれに年をとる日を決めているのです。上大ヶ生の場合は、師匠さんたちがさっと思い出せた範囲で次のようなものがありました。
 12月 8日 お薬師さんの御歳とり
 12月12日 山の神さんの御歳とり
 12月15日 お八幡さんの御歳とり
 12月19日 お蒼前さんの御歳とり
 12月20日 泣き面ダンゴの日(?)
それぞれに旧暦の日取りで行ったわけです。
 「これらの神様のおとしとりを逐一やるので12月はとんでもなく忙しい」という家もあったようですし、あんまりやらない家もあったようです。また、「家の敷地内や神棚に特定の神様を祀っている場合は、その神様のおとしとりは必ずやる」というケースもあったようです。特定の神様を祀っている家の場合は、その家の人だけでやる場合もあれば、地域の人たちがその家なりお堂なりに集まってきてやることもあったり。
 そして、“何をやるか”という中身が問題なのですが、神様を拝んで、特定のお供えものをする。そして人がそれなりに集まる場合は飲み食いする・・・ということのようです。

〜権現様のおとしとり〜
 上大ヶ生では、12月17日が大ヶ生家の権現様のおとしとりの日となっていました。この日は、上大ヶ生一帯から、そして根田茂・砂子沢からも朝から多くの人が大ヶ生家に権現様を拝みにきたということです。現在でも 上大ヶ生の集落の中で、何人かの方がこの日に権現様を拝みに大ヶ生家を訪れ、また夜には神楽のメンバーが大ヶ生家に集って拝んでいます。これと別に神楽を地域住民にお披露目する機会として2003年からは、上大ヶ生集落センターにて大ヶ生山伏神楽の舞い納めを毎年12月の土日におこなってきました。
 そして今年2008年からは、「権現様のおとしとり」と「舞納め」をまとめて12月の土日におこなうこととなりました。


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