すてきなおまつり式
八幡さまの山車 今年の見所


  すてきなおまつり式
八幡さまの山車 今年の見所
盛岡八幡宮例大祭の山車について、おまつりサイト“すてきなおまつり”(現在、短期休業中)の管理人“けんちゃん”さんから、解説・紹介をいただきました。



 盛岡のおまつりが、いよいよ明日から始まります。南部流風流山車を300年培ってきた、岩手の山車の拠点、盛岡八幡宮。その山車行事を見ることは、盛岡の本当の粋の形を見る事です。今年も各町内自慢の9台が運行。簡単ではありますが、山車の魅力により近く迫っていただくため、各々の解説を附したいと思います。(文責:旧すてきなおまつり管理責任者 山屋賢一)

【開催日程】
  9月13日(金)から9月16日(月)の4日間

【会場】
  盛岡市八幡町・肴町・新田町・大沢川原・三ツ割・中屋敷町・神子田町・加賀野ほか
    アクセス:JR東北本線盛岡駅から歩いていろんな所へ行ってみて下さい




基本形〜正調南部流風流山車〜

〜正調南部流風流山車は、桜は外塗り・内塗りのうちいずれかひとつに統一して片側に配し、天井には神様が降りてくる座布団の役目をする松を厚く飾り、両側には銀の水引で縁取りした紅白の牡丹を配す、昔乍らの山車で、今回は馬町一番組始め、4台がこの流派の山車を製作いたします。〜

【八幡町 い組】  演題: 鏡獅子

 最も古くから山車を運行し、かつ最も長い間山車を運行してきた、門前八幡町第4分団い組。今年は歌舞伎舞踊の鏡獅子を飾ります。正月の鏡開きの日、小姓弥生が名作の獅子頭を手に踊るうち、何時しか獅子の精に引き込まれ、真っ白な毛を振り立てて優美勇壮に踊る場面です。見返しには、獅子が絡む胡蝶の精を、胸に鞨鼓をしつらえて飾り、表裏で静と動の対比を醸し出します。南部流定番中の定番、見所は、やはり長い白毛。八幡町の獅子は特に長い毛を振り立てることで他との差をつけています。また、見返しの独特の表情も他では見られない貴重なものです。


【大沢川原 本組】 演題: 鳴神上人

 本物の南部流を信奉する方々が、今年最も期待している組です。歌舞伎十八番の中でも特に人間らしいどろどろした雰囲気を持つ『鳴神』は、女性の色香にかどわかされて妖術を破られてしまう法師の物語。一番の見せ場は、だまされたことを悟った鳴神上人が雲の絶間姫を追って、怒髪天を突き、衣に焔をまとわせながら六方を踏む場面、今年の本組は、これを見事に再現すると思われる一体ものの歌舞伎山車です。歌舞伎と言えば衣装。焔が以下に見事な刺繍で彩られているかが見所ですし、”追ってる感”が感じられるような躍動感にも注目です。見返しは、おそらく平成9年の南部火消しをリメイクしたのでしょう、『日本銀次』です。長年、南部火消しじゃなく日本銀次にしてほしいなあと個人的に思っていたところ、大変嬉しい趣向を用意してくださいました。
 

【三ツ割 み組】 演題: 先代萩 松前鉄之助

 これは本当に嬉しいんです。是非一度、み組さんに鉄之助をやってほしかった。というのは、化け物を作らせたら盛岡一ということもひとつですし、昭和61年以来温存されている、実にいい歌舞伎頭を持ってるんですよ、この組。この2つがコラボレートする今回の山車は必見。先代萩は伊達騒動を勧善懲悪物語に仕立てた歌舞伎狂言の名曲で、市川団十郎が唯一端役を演じる脚本としても有名です。その端役というのが、この松前鉄之助で、御家転覆を狙う仁木弾正がネズミに化けて巻物を盗み出したのを見つけ、額に鉄扇一撃を食らわせる見張り番です。鉄之助に受けた額のキズが元で、仁木弾正はその後窮地に立たされ、刃傷に及ぶこの歌舞伎最大の見せ場となるわけですが、まあそこらへんは歌舞伎専門家の当サイト管理人様のお任せいたしましょう。とにかく、躍り上がるように前方に倒れる巻物を咥えた大ネズミと、それに打ちかかる鉄之助の造りのよさ、おそらく現在では稀になった肌色に隈を取る形態と思われます。見返しは、正義の味方、若様を守る乳母政岡で、私は山車の人形としては始めて拝見します。
 

【馬町 一番組】 演題: 佐々木高綱

 一番組は、八幡町や紺屋町と並ぶ老舗の山車組で、武者一体ものを得意としています。が、大正期の番付などを目にすると、かなり派手な武者ものなども製作しており、当時が偲ばれます。なんと、今年、この偲ばれる騎馬武者を製作中との事(はい、拍手パチパチ)、馬年ということもあって、源平合戦は宇治川の先陣争い、一番名乗りをあげて川面を行く佐々木四郎高綱を飾り引きます。もともと一番組さんの使う人形って他より大きくて、一体ものにしてやっとという感じなのですが、今回騎馬武者に仕立てる際、どういう工夫をしてくるかが見もの。鎧のきらびやかさに加えて、たいへん躍動感のある場面なため、馬のつくりを相当工夫する必要があり、波出し(波しぶきを模した仕掛け)の配置も重要になってきます。武者ものの難しさと、それを超えたところにある素晴らしさが味わえると思います。見返しは年代ものの花咲爺。素朴で愛らしい、親しみの持てる人形です。
 

 




か組系
 〜現盛岡市主流南部流風流山車〜

〜盛岡観光協会始め、現在盛岡祭りを実行する上で中心的役割を果たしている皆さんの山車。その総本家である新田町のか組が4年ぶりに出場するほか、城西町も2年のブランクを経ての出場。比較してみると、盛岡山車の現状がよく分かります。〜

【新田町・夕顔瀬町 か組】  演題: 菅原伝授手習鑑より車引きの場

 外塗り、内塗り両方の桜を山車の両側に配し、金縁の牡丹をかなり上のほうまで持ってくるのが、か組系の特徴となっております。昔乍らの地元有志に手で作られるか組の山車、特殊素材を使用した軽い頭を用いた歌舞伎もので、『車引き』。ご存知、松王丸と梅王丸の吉田社前での睨み合い。松王の白い衣装と、梅王の赤い衣装がとても綺麗に対比されていて、2体ものの歌舞伎演目では最も華やかなもののひとつです。盛岡では昭和59年以来、市民みんなが待ち望んでいた演題です。見所は両者の温度差。均一でも、どちらかに比重がかかってもいけない。まさにバランスが左右する様式美の極地ってやつです。それと、表情の塗り方、これがまたうまいんだ。何にも知識が無い人が見ても、「綺麗」って思うはず。それでいいんです。だってみんなの山車だから。


【中屋敷町 城西組】 演題: 義経千本桜 鳥居前の忠信

 平成6年に、やはり同じ演題を製作しています。城西組さんでは、復活演目ってこれが初かも知れない。相当いろんなことを考えて作ってるんでしょう。3つのパーツで構成される義経千本桜のうち、最も人気の高い吉野山道行初音旅から、伏見稲荷で襲われる静御前を守るため、鼓を背に現れる佐藤忠信。実は母親の皮で作った鼓に恋焦がれて静御前を追いかけてきた源九郎狐の化身でありますが、焔隈という燃え盛るような隈取に車紋の入った赤い衣装、仁王襷を背に奮戦します。歌舞伎を代表する華やかな荒事、前に乗り出すような奥行きの効いた組付けと、人形の随所に垂れる房の躍動によって、ぐっと輝きをまして登場することと思います。
 

【(内丸) 社団法人 盛岡観光協会】 演題: 南総里見八犬伝 

 1体歌舞伎が続いた観光協会さんが、ついに2体ものを奉納。ファンとして嬉しい限りです。演題は八犬伝、私の知る限り最も難しい歌舞伎演題、芳流閣の見得。あおによしの豪華な瓦屋根を挟んで向かい合う勇士と義士の名場面は、これ、相当技術の高い所でなくては、バランスが取れなかったり、屋根がちゃちになったり、衣が歌舞伎っぽくなくなったり、一方が異常に小さい人形になったり…と、いい山車にはなりません。そのため、私が知る限りでも、沼宮内の野口町の山車組みや、盛岡長田町の山車組みなど、本当に名手しか手をつけてません。で、盛岡観光協会、名手中の名手ではありませんか。最近技術の粋を目に出来る演題が少なかったため、今回、物凄い期待の目でこの山車を拝見させていただきます。これが期待通りの名作だった場合、盛岡借り上げの来年以降の山車祭りは大いに盛り上がるでしょう。
 

亜流2件〜同好会の支える南部流風流山車〜

〜ともに濃厚な個性を含む南部流風流山車、盛山会さ組との組です。両者とも歌舞伎演目を得意としており、独特の表情、独特の装飾、八幡町囃子が特色です。〜

【神子田町 さ組】  演題: 扇恵方曽我 矢の根

 松の上から大きくせり出した人形配置が特色のさ組の山車、おもいっきり派手な衣装が期待される矢の根五郎を奉納します。初夢に兄の危難を悟って、鏃を研ぎ澄まして駆け出してゆく曽我の五郎、日詰上組でもいいものが出ましたし、矢の根の当たり年にして欲しいですね。赤い隈取は血管の拡張、五郎の若々しいエネルギーを象徴し、赤に5色の金糸で刺繍した蝶の紋も見事、とにかく彩り豊かなのが特徴。見返しの三浦屋揚巻は昨年のした手直しと思われますが、表情はもとより、頭にたくさん刺さってる簪の豪華さ、衣装のきらびやかさ、特に袖の部分に注目してみてください。全山車組み中最も統制の取れたお囃子もチェック。


【加賀野 の組】 演題: 廓通い 雨の五郎

 やはり曽我ものの一場面。先日見てきた石鳥谷西組の解説が非常にわかり易かったので、引用させていただきます。父の仇、工藤祐経をねらう五郎十郎の兄弟にも、きっちり恋人がいて、五郎の恋人は、城も傾くほどの絶世の美を備えた遊女。彼女からの恋文に、雨の降るのもかまわず、金糸銀糸の美しい羽織をまとう駆け出していく五郎の、穏やかなひと時の描写です。吉原というのは歌舞伎の息を醸し出す上で欠かせない舞台であり、気の効いた山車組では雪洞と柳の木を添えて、その雰囲気を盛り上げます。本来は黒が正当らしいのですが、なんと言っても照明に照り輝いて美しいのは白の羽織。雨の五郎にぴったりの頭をお持ちのこの組、近年ものすごい技術向上を果たしてきているだけあって、優美な中にも存在感あふれる作品が期待できます。見返しのわんこ娘も、うまくつくっれるといいなあ。
 

 





 …以上です。盛岡は広いため、ほかの山車祭りのように町内にいるだけで山車が見られるわけではありません。14日午後1時からの八幡くだり、これに集まってくるのが14日の午前中ですので、八幡町から盛岡バスセンター周辺をうろうろしているとよいと思います。15日の夜間パレードは夜6時から大通りにて。これも15日の昼過ぎから大通り周辺、おでって付近までをうろうろしていると、山車とぶつかり易いです。今年はどこの組にも期待が持てそう、皆さん、楽しみましょうね。  









“芸能ごよみ”へ戻る