志賀理和気神社例大祭
   日詰まつり
志賀理和気神社例大祭
   日詰まつり

南部流風流山車を見る 平成16年日詰まつり

 毎年お祭りのたびごとに趣向を凝らした飾りを作り変える山車を”風流山車”とか”飾山(おやま)”とかいいますが、これは東北地方と北九州地方で盛んなもので、全国的には稀有な山車の形です。東北エリアの風流山車について。日本海側は山形の新庄、秋田の土崎、角館といった拠点となる数個所にのみ点在し、限られた地域内で盛大に催されています。一方、太平洋側の、特にむかし南部藩と呼ばれていた岩手県央、県北、青森県南部地方には、それぞれの町に規模の異なる山車行事がくまなく伝承され、いかにこの地域の生活風土に”山車”というものが密着していたかを物語っています。(中略)

 岩手県の風流山車にもさまざまの形があり、中でももっとも古風で格式高い形を残すのが、盛岡市周辺の風流山車です。現在の盛岡型の山車の形は大正前期に確立したものと思われますが(山車行事そのものは江戸期からある)、京人形づくりの六尺ないし八尺といわれる人形を檜を組んだ大八車に据え、松・藤・桜・牡丹・岩・波・しぶきの7つの定式にしたがって豪壮華麗に飾り、前には小太鼓、後ろに大太鼓を乗せて「遣れ遣れ」と声をかけながら引き回します。ご協賛をいただいた家の前では山車をとめ、「このや館はめでたい館〜」と音頭あげをします。音頭上げを呼ぶ太鼓、山車を止める太鼓、休憩に入る太鼓、足並みを早める太鼓…と、太鼓ひとつにもさまざまなうち方があり、お祭りの2週間くらい前から町内の子供たちを集めて練習会が毎晩開かれます。

 紫波町日詰の山車も、この盛岡山車の流れを汲んで編み出されたもので、古くから当地域有数の盛況を誇っていた志賀理和気神社の祭礼に、昭和元年から登場し始めました。狭い地域から4台の山車を出すのであり、互いに競い合って照明や囃子に凝ったため、4つの組ともまったく異なる囃子、飾り方で現在の形を完成させています。盛岡では山車がすれ違うとき、綿密に交渉した上で互いに囃子を止め、無言のまま拍手をしてすれ違います。ところが日詰では、山車がすれ違うときほど囃子を強め、互いにつられないよう勤めながらすれ違う、とこれは昔からの風習です。音を誇るだけでなく、たたき方、撥の動かし方にも細かい規則があって、全体にすごく派手で威勢のよい引き方をしているように、観客の私は思います。大太鼓のリズムに合わせて特有の気合をかけ、石鳥谷と並ぶ山車を大げさに揺らしながら進む元気な引き方です。

 さまざまな交通事情により自由に動くことが困難な山車行事もたくさんありますが、日詰では本当に奔放に、各組運行しています。一番盛り上がるのはお祭り3日間の夜、日詰商店街でのライトアップされた山車の運行ですが、国道4号線を真一文字に突っ切る国道越えも、日詰ならではの珍しい風物です。



平成壱拾六年 志賀理和気神社奉納山車一覧

奉納組演題見返し
上組若者連(鍛冶町)●風流 暫【シバラク】●坂東玉三郎 楊貴妃
一番組(習町寺小路)●風流 新古演劇十種の内 土蜘●花咲爺と紫波の地酒
橋本組(仲町)●風流 歌舞伎十八番の内 景清●曽我五郎廓通い
下組(日詰六,七,八区)●風流 朝比奈三郎義秀●子連れ狼


風流山車解題



上組
〜成田屋荒事歌舞伎の代表的な演目で、初代市川団十郎の手になる脚本が其の原型といわれる『暫』です。元禄時代から演じられてきた歌舞伎ですが、時代や役名が長い年月で変遷し、とにかく主人公の正義の味方が「しばらく、しばらく」と悪人を引き止めて登場するので、『暫』という題名になりました。団十郎茶といわれる独特の高貴な色の衣装に、旗をくっつけて歩いているのかと思うほど幅広な素襖をつけ、頭には5本の車鬢と御幣を飾り、顔には牡丹の花から思いついたという華やかな二本隈取をとります。風流山車を引き出す地域では、暫はよく作られる演目のうちに入ります。すごく彩りがよくて、派手で、縁起のよいものだからです。日詰まつりに『暫』が登場するのは13年ぶり、数あるデザインの中でももっとも難しい、刀も扇も持たない素手の見得です。両手を特注しているので、従来の仕立て直しとは一味違った仕上がりを期待できます。見返しは坂東玉三郎の舞踊から、『楊貴妃』を取り上げ、こちらは人形を含む完全自作に挑戦します。

一番組
〜土蜘蛛は変幻自在で、日本最強の妖怪なのだそうです(水木しげる氏の妖怪辞典による)。神武天皇の昔、大和の国葛城の狩猟民の村が虐殺に遭いました。このとき皆殺しにされた村人の怨念が葛城山にこもり、数百年を経た平安天禄の御世に、帝を守る武士の大将、源朝臣頼光の許に復讐にやってきたのです。土蜘蛛は身の丈2メートルの怪僧に化けて病に臥せっている頼光を襲いますが、逆に片足を切られてしまい、血の跡をたどって葛城山にやってきた頼光の家臣独武者(ひとりむしゃ:千人力の武将を指す)を相手に、ついに本性をあらわして暴れまわる…というのがこの山車の場面です。妖怪の山車なのでちょっと怖い気もするのですが、代赦という茶色い隈取と、ほかにないような豪華な配色の衣装がとても綺麗です。踏み付けている軍卒は、正式には8人いて蜘蛛の足を表現しているそうです。見返しには、盛岡では登場していない新作の花咲かじいさんを乗せ、紫波の誇る地酒4銘柄の酒樽を添えました。

橋本組
〜最近、日詰まつりでとてもはやっている景清(かげきよ)の山車です。藤原景清といって、悪七兵衛の異名でわかるように、大変勇猛な侍大将でした。壇ノ浦では能登守教経のもとで奮戦、源氏方の三保之屋と兜の引き合いをした逸話が残っています。この戦で平家が敗れ、鎌倉方の軍門に下った景清は平敦盛が持っていた宝物、青葉の笛のありかを聞かれ、投獄の上折檻を受けます。いくら攻め立てても宝のありかをいわない景清に業を煮やした源氏方は、景清の想い人である阿古屋太夫を引き出して、これに折檻を加えようとします。怒った景清が牢屋の格子を素手で破って暴れまわる…というのが、今年の山車の場面です。景清がとっている隈取は、一部に青い筋が入る”半隈”というもので、牢屋に入って疲弊していることを表すものですが、仕上がりの華やかさを支える重要な要素になっています。源氏方への復讐の念を断つため自ら両目をえぐったという伝説があり、観音様の救いで再び光を得たところから、景清伝説には観音信仰も深く関わっていたといわれています。見返しの曽我五郎は御霊信仰にゆかりの深いものといわれ、有名な富士の裾野の仇討ちを前に、世を欺くため遊郭に出かける華やかな踊りの山車です。

下組
〜今年唯一の武者もの。鎌倉時代に執権として権力を振るった北条一族が、源頼朝に仕えてきた屈強な鎌倉武士たちを次々に排斥していた時期のお話です。朝比奈三郎は、侍所別当和田義盛の三男で、母親は巴御前とも言われ、幼いころから大変武勇に優れていました。侍所別当の地位を狙った北条義時の謀略に遭い、謀叛人にされてしまった和田の一族は北条との戦を決意し、三郎も一群を率いて北条方の砦を攻めます。北条方は門をかたく閉ざして篭城し、其の城門は矢を打ち掛けてもびくともしない、大変頑丈なものでした。三郎はふと足元を見て、草鞋の下の大きな敷石を独りで軽々と持ち上げると、これを城門へ向かって放り投げました。大きな重い敷石を当てられては頑丈な門もひとたまりもなく、三郎の一群は見事砦を攻め落としたということです。従来よく作られてきた山車ですが、今回はよく目にするものと根本的にデザインが違っていて、朝比奈の山車の新境地を開く大変創造性にあふれたものとなっています。見返しはテレビでおなじみの子連れ狼で、拝一刀が居合抜きをします。



志賀理和気神社例大祭 日詰まつり日程

【9/2(木)】
※自発的前夜祭(各組車庫の前で太鼓練習総仕上げ)pm6:30〜8:30


【9/3(金)】宵宮祭

奉納神楽 pm3:00 志賀理和気神社社殿にて(※社殿内での見物歓迎:赤沢神楽が最もかっこよく見えるステージです)
→早池峰岳流赤沢神楽『祝詞(御神楽奏上)』『鳥舞』『翁』『三番』『八幡』『岩戸舞』『権現舞』

祭事 pm5:00

※山車出発式 pm3:00ころ 各組車庫前
→山車出庫、赤石神社(志賀理和気神社)へ向かう
→各組山車赤石神社前集結 pm5:00

音頭奉納祭(境内で各組の頭取による音頭あげ) pm5:30〜 志賀理和気神社
※鍛治町さんさ踊りの奉納が直後にありますのでお見逃しなく。
氏子舞踊奉納(赤石神社巫女舞『浦安の舞』・桜町田植踊ほか) pm6:30〜 志賀理和気神社

※山車赤石神社発 <橋>pm6:30<一>pm6:40<下>pm6:50<上>pm7:00
→山車4台日詰商店街自由運行、門かけ(音頭あげ)
→山車納車予定 pm9:00ごろ


【9/4(土)】神幸祭

※今年は神社が御鎮座1200周年につき、普段以上に豪華なお通りを行います。
神社御神輿渡御(赤石神社から半日かけて日詰地区全域を廻る)
→神輿発御pm1:00〜高木公民館前〜ナックスpm2:30〜紫波警察署前〜富岡鉄工所〜工藤酒店前〜フルーツたもり前pm4:00〜平六酒造店〜日詰商店街〜(国道横断)〜紫波中央駅前通〜薬師神社pm5:15〜鍛治町皇大神宮pm7:00〜神社還御pm8:00

※神輿行列概要
・猿田彦尊
・志賀理和気神社神旗
・南部一ノ宮幟行列
・干支杖行列
・寛永年間作の志賀理和気神社宮神輿
・大巻堤島神社神輿(もともと志賀理和気神社の神輿であったゆかりの品)
・白山神社赤沢権現および神楽衆打ち鳴らし
・百澤神社星山権現および神楽衆打ち鳴らし
・町内全権現頭随行
・郷土芸能随行(船久保さんさ踊り・宮手獅子踊り・釜石より招聘の虎舞・かじ町さんさ)
〜神輿お旅所にて上演 @桜町ナックスお旅所pm2:10〜・A日詰商店街お旅所(山屋時計店そば) pm4:00〜

・各種神器行列
・布施車

※各組山車出庫 pm1:30〜3:00(住宅地中心に町内を巡る)
※各組山車日詰商店街北上 pm6:30←(実質午後5時半には各山車とも日詰商店街にいる)
※各組山車皇大神宮前集結 pm6:45←
※日詰商店街大パレード(神輿夜間渡御) pm6:30鍛治町出発
(←…パレードが1時間早まった関係で、山車の集まるタイミングに若干の変化が予想されます。ご注意ください。)
・志賀理和気神社神輿渡御行列
・上組山車
・一番組山車
・橋本組山車
・下組山車
・桜組練り神輿
・祭興会練り神輿
※日詰商店街習町ヒノヤタクシー前にて星山神楽しんがく舞披露
※パレード解散後、山車はUターンして再び日詰商店街自由運行、納車pm9:00〜9:30
※赤沢神楽しんがく舞にて日詰商店街全戸門かけ@


【9/5(日)】奉祝大祭

元宮祭 am8:00

※各山車・神輿は昼12時半〜3時ごろ出庫して桜町、日詰地区、日詰商店街を運行。
※最終日の日詰商店街夜間運行はpm7:00ごろから→下組・一番組 pm9:00納車
※赤沢神楽しんがく舞にて日詰商店街全戸門かけA
〜山屋時計店での門付け間近見物希望の方はご連絡下さい〜

※上組山車北上開始 pm8:00(各種手踊り、鍛治町さんさ踊を披露しながら門かけ)〜納車pm10:00
※橋本組車庫前囃子 pm9:15〜pm10:00→祭典実行委員会祭典終了の挨拶
※祭典期間は午後6時半〜10時まで交通規制
→日詰商店街(スパー城山店から紫波橋通り交差点まで)歩行者天国


●併催:日詰商店街くらしのみち実験 大型車両を通行止めして歩道を多く取り、出店をみっちりと詰めてゆっくりとお祭り見物を楽しめます。

●併催:見世物小屋くまがい座 国道4号線紫波町役場向かいに設置。お祭り会場アクセスの目印に。

●商店街山屋時計店にて、すてきなおまつり管理人所蔵の山車資料各種を公開いたしますので、ご希望の方は h1201075@iwate-u.ac.jp までご予約ください。

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